東京地方裁判所 昭和28年(ワ)4846号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕判決が証拠によつて確定した事実関係は、次のとおり。
被告前田が原告から賃借中の本件家屋について、原告に対し、二階六畳間を学生などに貸したいと承諾を求めたところ、原告はこれを承諾した。そこで被告前田は二階六畳間に学生を下宿させて来た。その後学生が出たので、被告前田は聖ミカエル学園事業部につとめている被告森本をそのあとに下宿させた。被告森本には妻があるが、同人もつとめに出ているので、被告前田は、森本夫妻の食事の世話はもとより洗濯、つくろいものまで世話してやつて下宿代をもらつていた。被告森本夫妻は善良な下宿人で、家屋の使用についても特に粗末な態度は示さなかつた。
原告は、被告前田が被告森本を入れたことは、無断転貸にあたるとして、次のように主張している。即ち「被告前田が本件家屋に学生を下宿させても、被告前田の世帯の構成員が増加すると同様であつて、これによつて本件家屋の使用方法は従前とあまりちがわないから、原告は学生に貸すことを承諾したのである。ところが本件家屋を数世帯で使用することになれば、一世帯で使用する場合に比較して、使用方法が著るしくちがう。したがつて、原告は本件家屋を数世帯で使用することを被告前田に許したことはない。しかるに被告森本は独立の世帯を作つて本件家屋に居住しているから、被告森本に対する転貸は、原告の承諾を得ていないことになる。」と。
〔判断〕判決は次のように説いて原告の主張を斥けた。
本件家屋二階六畳間を学生などに貸すことを原告が承諾したという、その「学生など」という主旨は、学生又は学生と同じような仕方で下宿し、部屋を特に粗末に使用するようなことのない人を指す主旨と解するのが相当である。学生に限る理由はないし、学生以外の者を含むとする以上それは右のような範囲の者を指すと解するのが合理的であるからである。被告森本はさきに認めたような人である。そして同被告が特に粗末に家屋を使用するような人であることは、これを認めることができる証拠がないから、被告森本は転借を許された者と認めるのが相当である。かようにみてくると、被告前田が前記部分を被告森本に転貸するについては、原告は承諾を与えた、と認めなければならない。